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特集 自然あそびQ&A

「自然あそびって、どんなところがいいの?」
「苦手な虫を克服できる?」
そんな自然あそびに関する疑問やヒントについて
自然保育コーディネーターの高橋京子さんに伺います!

監修/高橋京子(ウレシパモシリ―保育と自然をつなぐ研究会―主宰
自然保育コーディネーター)
構成・文/小園まさみ

ウレシパモシリ―保育と自然をつなぐ研究会―主宰
自然保育コーディネーター
高橋京子さん

20年前から保育の世界にかかわり始め、デンマークやドイツなど北欧の保育を視察し、現場を体験。それらの経験を通して、自然を保育に取り入れることで、子どもの発話や感性、体験の幅、育ちのエネルギーが広がっていくということを実感しました。

自然あそびというと、山や川など自然いっぱいの場所に出向くことを考えがちです。それもとてもよいですが、今増えている都市型の親子にはなかなか継続しにくく、その場だけのものになってしまいます。実際、保護者の方や保育士さんから「自然あそびをしたいけど、近所に自然がなくて……」という相談を受けることも多くあります。

そこで、わたしの主宰する「ウレシパモシリ」では、「身近な自然の多様性を保育に加えることで、狭くなりすぎた子どもの経験の幅を広げること」をコンセプトとして活動しています。何もないように見える都会にも、一歩外に出れば街路樹があったり、アスファルトの端に花が咲いていたり、公園や大きな木の植えられた神社だってあるはずです。そんな身近な自然を取り入れながら、今ある環境を生かして自然と触れ合うこと、それを日々の生活や遊びの中で楽しいと思う心につないでいくことが、わたしたちの仕事です。

自然も人間も1人1人違うもの。それぞれの個性を伸び伸び育てていきたいですね。

A自然あそびの良さは、まずは、命に直接触れ合えること。同じ木の葉っぱでも1枚1 枚色も形も違うように、自然の命は皆、多様性を持ち、一つとして同じものはありません。日々変化し、人間の思い通りにはいかないのです。
それって、子どもと同じですね。子どもも一人ひとり大切な命を持ち、皆違う個性を持っています。自然あそびを通して、ゆっくりと多様な命に向き合うことで、親も子も大切なことを自然から学ぶことができます。

また、自然あそびは五感を豊かにしてくれます。自然には、人工物にはない色や形、触り心地やにおいがあります。小さなときに出会った五感の記憶は、しっかりと残るのです。知識だけで覚えたことは、忘れてしまうことも多いですが、大好きだった花のにおいや、葉っぱの感触は大人になっても覚えていますよね。この五感の記憶は、就学後に知識と合わさることで、子どもの力がぐんと伸びる大きな助けになります。机の上だけでなく、実際に体験したことで、より確かな力になるのです。

A自然あそびをするには、知識よりもまずは感じることが大切です。
例えば知らない花の名前を子どもに聞かれたら、みなさんはなんと答えますか? わたしは「ごめんね、分からないんだ。○○ちゃんはどんな名前がいいと思う?」と子どもに聞いてみるようにしています。すると子どもたちは、その花の色や形を見ながら、自由な発想で名前を考え始めます。
こうして向き合うことで花との1 対1 の関係が生まれ、自然と友達になることができます。そのあとで「もっとこの友達(花)のことを知りたい!」と思ったら、家に帰って図鑑で本当の名前を調べればいいのです。

自然と触れあ合う中で、ワクワクドキドキする発見が子どものやる気や好奇心を高めていきます。たくさんの知識よりも、その思いに寄り添う大人の存在や、共感し合うかかわりが、子どもには必要なのです。「きちんと教えなきゃ」と気を張らず、大人も楽しみながら、もっと楽な気持ちで子どもや自然と接してみてくださいね。

ふさふさの葉っぱでこちょこちょ。絵本への興味が、自然への興味につながります。

A大切なのは「まず大人が楽しむこと」。子どもは大人が楽しんでいる姿を見たら、きっとそこに興味を持ちます。

また、子どもの好きなものを通して、自然と友達になるきっかけを作ってあげても。例えば、わたしは『こちょこちょ』(福知伸夫著/福音館書店)という本を園庭に持っていって、子どもたちに読み聞かせをすることがあります。こちょこちょする場面では、エノコログサ、またはエノコログサのようなふさふさゆらゆらした葉っぱを見つけ、それを使って登場人物をこちょこちょ。子どもたちがエノコログサに興味を持ったら、今度はそれを保育室に持ち帰って、観察したり工作をしたりします。子どもの好きな絵本が、自然への興味をつないでくれるのです。絵本に限らず、おままごとセットを外に持ち出して、草花や枝、石や砂などを材料にして遊んでもいいですね。

セミの抜け殻をそーっと……。子どもが興味を持ったタイミングで、少しずつ自然と仲よくなっていきましょう。

Aまずは虫と楽しく遊んでいる様子を見せてあげるといいでしょう。わたしが主催する講習会でも、虫が苦手な子がよく来ます。そんなときはママやパパ、友達が楽しそうにしているところに連れていくと、はじめのうちは怖がっていますが、そのうち気になって自分から近づいていきます。そこで嫌がらないようであれば、虫を近づけて「どんな目かな? 顔の形はどうなってる?」と声をかけながら、よく観察させてあげます。子どもが自分から近づいたタイミングで、楽しく出会わせてあげるのがポイントですね。

とはいえ、無理に克服する必要はありません。嫌がる子に無理をさせると、さらに虫が苦手になり、虫が住んでいる自然の世界にも苦手意識を持ってしまいます。また、親が虫を苦手とする場合も、無理に触ろうとすることはありません。いやいや接していると、子どもは「これはママやパパが嫌がるものなんだ」という印象を持ってしまいますよね。無理をせず、親子で楽しめることから一緒に広げていくことで、自然と触れ合ってみましょう!

砂絵遊び。遊びの中で、表現することの楽しさを知っていきます。

目玉を付けるだけで不思議な生き物の出来上がり!

A特集『夏の自然あそび』のページで紹介した遊びをアレンジしてみると楽しいですよ。「光のじゅうたん」に切り込みを入れると、穴から透ける光を楽しめます。「葉っぱとお花のウォータースライダー」で、水にぬれた花びらを窓にはって並べるのもきれいです。

もっと手軽なものでは、スティックのりでできる砂絵遊びなどもあります。紙にスティックのりで絵をかいて砂をかけ、「いないいないばあ!」と声をかけて砂を落とすと、かいた絵が現れます。子どもが自分で絵をかいてもいいし、大人がキャラクターなどをかいてあげてもよいでしょう。

また、紙で目玉を作って外に持ち出すだけでも十分楽しめます。気になったところに目玉をぽんと置くだけで、ユニークな顔の出来上がり! 木の根を鼻に見立てて、ゾウの顔を作る子もいます。自然あそびにはこうと決まった形はありません。自由な発想で遊びを広げていってくださいね!

講座でも最初に遊びの約束を決めています。

A「ちょっと危険かも」と思う遊びをする際には、事前に子どもと約束事を決めるとよいでしょう。ドイツの幼稚園では枝で遊ぶ際に、「枝を持つときは人の顔の前で振り回さない」「火にくべた枝は取り出さない」ということだけを子どもたちと約束して遊んでいます。わたしはさらに「枝を持って走らない」ということも約束に加えています。この約束は遊びの前に決めましょう。遊び始めてからだと、なかなか子どもの耳に入りません。このとき、子どもと一緒に何をすると危険か考えるのがポイントです。
例えば大人が自分の顔の前で枝を軽く振りながら「こんなふうに枝を振るとどうかな?」と聞いてみます。子どもが「あぶない」と答えたら、「じゃあ枝を振るのはやめようか」と、約束するのです。

子どもは自分が決めた約束はきちんと守ります。逆に危ない理由を伝えず、一方的に「これはだめ」と言うだけだと、気を引きたくてわざと危険なことをしてしまうこともあります。子どもを管理しようとするのではなく、1人の人間として接して、一緒に考えることが大切ですね。

Aまずは熱中症対策として、必ず水分補給できる飲み物を持っていきましょう。甘いジュースなどよりも、水のほうが転んだときの消毒にも使えて便利です。

服装は帽子をかぶり、できるだけ素肌を出さないようなものがよいでしょう。暗い色はハチにねらわれる場合もあるので、明るい色の物を身につけましょう。香水も同様にハチが好んで寄ってくるので、つけるのは避けましょう。
また、事前に休憩用の日陰スペースを探しておくことも大切です。お弁当なども腐らないよう、クーラーボックスに入れてこのスペースに置いておくといいですね。もし日陰がなければ、木にブルーシートをかけて、人工的に作ってもよいですね。

遠出して山に行くときは、午前中に遊んで13 時ごろには帰り始めるのがベター。山では午後から天気が変わることが多くあります。雨がまだ降っていなくても、遠くで雲行きが怪しくなってきたり、ゴロゴロと雷の音が聞こえてきたら、すぐに撤収しましょう。
特集『夏の自然あそび』のページで紹介した「自然あそびの3 つの約束」も忘れずに!

今の時代は子どもの安全を優先するあまり、危ないものを大人が先回りして排除し、きれいに整えた道だけを与えてしまいがちです。一方、自然の中には危険に見えるものもありますが、その中で自分からいろいろなことにチャレンジしたり、失敗や成功をたくさん体験したりすることができます。そこで得た経験や自信は「自分ってまんざらでもないな」「自分にもできるかも!」と自信を持って進んでいける大人になるための基盤になります。  

また、寄り添ってあげる大人の存在も不可欠です。子どもの気持ちに寄り添って、その子が何を求めているか、見つけてあげてください。愛されているという実感は、きっと子どもたちの力になります。それは近い将来、子どもの豊かな育ちを実感する喜びとして保護者にも返ってくるはずですよ。
人生の中で、子育ての期間はあっという間。ぜひこの時期を子どもとめいっぱい満喫してください!

自然あそびや、高橋さんの活動をもっと知りたい方はこちら!

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