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父ちゃんからの手紙

Vol.11 佐賀

林太郎へ

 父ちゃんは今日、佐賀県杵島(きしま)郡白石町に来ています。ここでは、お米やレンコンなど、おいしい作物がいっぱい採れます。その秘密を教えましょう。それは昔、この辺りの土地が海の底だったということ。そして、その海は有明海と言う、底が泥で満たされた特別な海だということ。

 その証拠に、レンコンの水田に足を踏み入れると、足が沈んでいき、まるで底なし沼にはまってしまったかのよう。もがけばもがくほど沈んで、父ちゃんは体中どろどろになりました。でもこのどろどろに栄養が含まれていて、作物が元気においしく育つそうです。

 レンコン農家のおじさんは、じゃぶじゃぶと泥をかき分け、レンコンを探し出します。レンコンは切ると真っ白に輝いて、どろどろから出てきたとは思えない美しさでした。

公文健太郎プロフィール

1981年生まれ。1999年から、ネパールを舞台にドキュメンタリー写真を撮り続け、写真集やエッセイ、写真展などで発表。また、近年は世界各地にテーマを持ち、作品づくりを続けている。写真集に『大地の花―ネパール 人びとのくらしと祈り―』(東方出版)、『BANEPA―ネパール 邂逅の街―』(青弓社)、フォトエッセイに『だいすきなもの―ネパール・チャウコット村のこどもたち―』『ゴマの洋品店―ネパール・バネパの街から―』(ともに偕成社)などがある。2012年日本写真協会新人賞受賞。

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