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父ちゃんからの手紙

Vol.10 岩手

林太郎へ

 平成23年3月11日、東北で大きな地震がありました。大きな揺れと津波で、たくさんの人が亡くなり、住む家が流されました。父ちゃんは今日、その被災地の一つ、岩手県の山田町にある仮設住宅に行ってきました。

 家族が流され一人になってしまった人、思い出の詰まった家や、大切にしてきた仕事の道具を失った人。お話を伺うと胸が苦しくなり、涙をこらえることができませんでした。でも今日、父ちゃんは悲しい気持ちだけでこの手紙を書いているのではありません。

 辺りがすっかり暗くなった帰り道。仮設住宅の玄関わきに大きな鮭を見つけました。塩漬けした鮭を冬の寒い外で干して、荒巻鮭を作っているのですね。鮭を照らす窓の明かりが父ちゃんにはすごく明るく見えました。そして、その家の中からは楽しそうな笑い声が聞こえました。

 父ちゃんはここに来て、悲しいお話をたくさん聞いたのと同時に、一日一日を大切に生きることの大切さを教えてもらった気がします。

公文健太郎プロフィール

1981年生まれ。1999年から、ネパールを舞台にドキュメンタリー写真を撮り続け、写真集やエッセイ、写真展などで発表。また、近年は世界各地にテーマを持ち、作品づくりを続けている。写真集に『大地の花―ネパール 人びとのくらしと祈り―』(東方出版)、『BANEPA―ネパール 邂逅の街―』(青弓社)、フォトエッセイに『だいすきなもの―ネパール・チャウコット村のこどもたち―』『ゴマの洋品店―ネパール・バネパの街から―』(ともに偕成社)などがある。2012年日本写真協会新人賞受賞。

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